なくした時間にいてくれた

岡くんは白い歯を見せて言葉通り嬉しそうに笑った。

その笑顔に心が大きく揺さぶられる。以前岡くんの笑顔を見ても何も感じなかったのに何でだろう。

大きく動く心臓を静めるように軽く息を吐いた。


「まだ妹からのメッセージを全部読み終えてないの。今日帰ってから残りを読もうと思っていて。そのあとで岡くんと話をしたいんだけど……」

「うん、いいよ。じゃあ、連絡先交換してもいい?」

「うん。あの、妹とは交換したんだよね?」

「うん。花実ちゃん、誰にも入れ替わったことを話せなくて一人で苦しんでいたから少しでも話せることで楽になれればいいかなと思ってね」


何となく自分が知るよりも花実が知っていたことに心がチクリと痛む。

誰にも相談できなくて、岡くんが良き相談相手になってくれていただけなのに私は何を落ち込むのだろう。


「岡くん、ありがとう」


連絡先を交換してからお礼を言った。