なくした時間にいてくれた

「うん。妹さんが亡くなってしばらく休みだと先生が言ったから、慌ててお葬式に行ったんだ。亡くなったのは妹さんの体だろうけど、中身はどうなってるのだろうと気になってね。で、松本さんを見て、確信したよ。元に戻ったんだなと。妹さんと話は出来た?」

「ううん。私の意識が戻ったときにはもう妹はいなかった」


岡くんは腕組みをして「んー」と唸ってから、窓に顔を向けて空を見上げた。私もその動きを追って同じように空を見る。晴れてはいるけれど、雲が多い。


「松本さんにメッセージを送っていると聞いたけど、読んだ?」

「うん」

「そうか……まさか死んじゃうとは思わなかった。花実ちゃんの体が元に戻るというか意識が戻ると思っていたし、その時は中身はどうなるんだろうとは思っていたけど、死んでしまうなんて予想外で……ショックだった。なんて言うのがいいのか分からないけど、元に戻れてよかったね」

「よかったのかな?」


私はこうやって元に戻ってはいるけれど、花実は戻れなかった。最後に花実の意識は自分の体に戻れたのかな。