なくした時間にいてくれた

「おはよう」と元気よく教室に入ってくる岡くんの声が聞こえ、ビクッと体を強張らせた。

話をしたいと思っていたけど、何から話したらいいのか悩む。後ろの席に岡くんが座るのを気配で感じた。

振り向きたいけど、振り向けない。


「松本さん、おはよう。今日から来れたんだね」

「あ、うん。……おはよう」


声を掛けられて一瞬だけ顔を後ろに向けて、岡くんと視線を合わせたが、すぐに前を向いた。

せっかく話し掛けてくれたのにすぐ前を向いてしまってどうするのよ、私ったら。

でも、何だか見透かすような目で少し怖かった。岡くんは私をどっちだと思っているのだろう。

まだ中身は入れ替わったままだと思っているのかも。聞いてみないと分からないけど、勇気が出なくて聞けない。

結局何も聞けないまま昼休みを迎えてしまい、私はお弁当を持って図書室へ行った。ここに来ると心が落ち着く。