なくした時間にいてくれた

「おばあちゃん……私の体、どこも怪我していない?」

「怪我? 倒れる時にはどこもぶつけていない感じだったけど、どこか痛いの?」

ゆっくりと体を起こす私を心配そうに見る祖母の目は充血していた。

どこも痛くはない。でも、長い間眠っていたように感じて頭がぼんやりする。

追突されて、頭を打ったのかもしれない。でも、痛くはない。



「ううん、どこも痛くないよ。おばあちゃん、みんなはどうしている?」


運転していた父と助手席に座っていた母と私の隣に座っていた妹の花実は無事だろうか。


「お父さんとお母さんは今、いろいろと手続きをしているよ」

「そう。花実は?」

「花ちゃんはやっぱりダメだったの……」


祖母の目から涙が落ちる。充血していたのは泣いていたからなんだと知る。


「花実、死んじゃったの?」

「うん……いつか元気に目覚めると思ったのに……かわいそうに」

「そうなんだ。花実を見に行ってもいい?」

「うん」