なくした時間にいてくれた

なるほど。余分に持っていたものをただあげたと。

たかがペン、されどペンで岡くんはお姉ちゃんから物をもらったことになる。

そのことを小池さんが知って、怒ったのかも。たかがペンではあるけれど、あげたという部分だけが小池さんには重要去れたんじゃないかな。


『それで、俺はもっと松本さんと話したいと思ったけど、委員会のときでさえも話し掛けても無言だし、何か嫌われるようなことをしちゃったのかなと思ってね……』


その時のことを思い出したのか岡くんの声には段々力がなくなっていく。

話し掛けても返事がなければ、何度も話し掛けられない。何がお姉ちゃんの逆鱗に触れたのかは分からないけど、話すことが出来なくなったと言う。

そして、三年で同じクラスになり、あれから時間が経っていることもあり、勇気を振り絞って声を掛けたそうだ。


『久しぶりに目を合わせてちゃんと答えてくれた』

「何を話したの?」

『同じクラスだね、一年間よろしくと言ったら、よろしくと返ってきた。あの時は嬉しかったよ。無視されなかったからね』