なくした時間にいてくれた

担任の先生が持ってきてくれると思っていたから、岡くんが現れて驚いた。母が「ありがとう」とカバンを受け取りながら名前を聞く。


「岡と申します」

「岡くんね。うちの子と仲良くしてくれているのかしら?」

「お、お母さん。岡くん、まだ授業あるから引き止めたら困ると思う。岡くん、ありがとう」


何を勘繰っているのか、お姉ちゃんの彼氏だと思ったようで上から下までじっくり見てから聞かなくてもいいようなことを聞くから私は焦って、母の腕を引っ張った。

岡くんだって、突然そんな品定めでもされるように見られたら困るだろう。


「いや、無理しないで。ゆっくり休みなよ」

「うん、ありがとう……」


母がいる前での優しい言葉に気恥ずかしくなって、私は床に向かってお礼を言った。


「じゃ俺、戻ります」


岡くんが出ていって、すぐに私も母と保健室を出た。家に帰ると夕食まで寝ているように言われて、ベッドに横たわる。

眠くはないけれど、目を閉じて今日のことを思い出す。