なくした時間にいてくれた

花実のことを忘れないでいてくれるというだけでも充分なのに、ずっと友だちだと言ってくれる。みんなの優しさに心があたたかくなる。

花実はいい友だちに恵まれていた。

柴山くんの後ろにいた一人の女の子が私の前に出てきた。髪の毛を二つにくくっていて、目がくりっとしたかわいらしい子だ。


「一番優しかったのは花実ちゃんです。花実ちゃんが優しくしてくれていつも助けてくれました。花実ちゃんの優しさに救われることが本当に多くて、私もいつか優しさを返したいなと思っていたのに……」


彼女は声を詰まらせて涙を流した。それを見ていた別の女の子が彼女の背中をさする。

その時、桜の花びらがひとつ彼女の頭に落ちてきた。桜の木はここからは少し離れているので、花びらが飛んできそうもない。だけど、彼女を慰めるかのようにピタッとくっついた。

泣いている女の子は涙を拭って、また言葉を続けてくれた。