なくした時間にいてくれた

そう言って、怪我をしていない手を出すからその上に手を乗せると彼の胸に引き寄せられた。

もしかして今、抱き締められている?


「祐介くん?」

「心臓の音が伝わってくる。あー、なんか生きてるなって感じするよね。楓花、これからも大事にするからずっと俺のそばにいて」


薬の匂いがする腕の中で私はこくりと頷いた。私も同じように大事にしたい。


「ずっと祐介くんのそばにいるから、私から離れないでね」

「もちろん、離さないよ。絶対に離さない。うっ、いてて……」

「えっ? ちょっと、無理しないで。傷口が開いたらどうするの……」

「うん。いてて……」


怪我をしている手の力を入れてしまった祐介くんは痛んだらしく、悲痛な声を出す。

私は離れてその手を見る。見たところ血が滲んでいる様子はないから大丈夫かな。でも、心配だ。看護士さんを呼んだ方がいいかな。

私が心配していろんな方向から手を見ているというのに、祐介くんは楽しそうに口を開く。