なくした時間にいてくれた

「分からない?」

「うん、分からない。何? 簡単に言える言葉?」


もしや英語とかフランス語とか?

外国語だったら難しい。私は「サンキュー」も簡単に言えない。「ありがとう」なら言えるけど。


「楓花だけにしか言えない言葉だよ」

「私だけ?」


祐介くんはにっこり笑って、頷くけど、ますます分からない。


「楓花の気持ちを言ってくれたら俺は元気になれる。まだ聞いたことないんだけど」

「私の気持ち? えっ、ええーー! 無理! 無理だよ! いきなりそんなこと言われても困る」


祐介くんがとんでもないことをを要求するから私はつい大きな声を出して、拒否してしまった。

そしてまたもや看護士さんから「病院では静かにしてくださいね」と注意をされる。

この前注意をされたのは祐介くんだけれど。


「そんなにも無理なこと? これでも不安なんだけど、俺ばかりが想っているだけなのかなと。それに花実ちゃんの手紙にも書いてあるよね?」