なくした時間にいてくれた

私は母が帰ってくる前に紅茶を飲み干して、自分の部屋に行った。そこでもう一度初めから手紙を読む。

読めば読むほど花実の切ない気持ちが伝わってきて、涙が溢れて止まらない。

これは祐介くんだけに見せよう。

父と母には花実の想いを伝えることが出来ないけど、花実の遺志を継ぐことは出来る。

花実の分まで私は二人を大事にする。花実ほどおしゃべりにはなれないけど、出来るだけたくさんの話をしよう。少しでも二人の寂しさが消えるように。

後悔はしたくない。花実がやりたかったと思うことを考えて実行する。

いつでも花実が付いていてくれることを信じて。



「花実ちゃんは戻れないことを感じていたんだね。そんなふうには全然見えなかったけど、一人で苦しんでいたんだろうな。もっと頼ってくれて良かったのに。俺じゃ、やっぱり頼りにはならなかったのかな」


花実の手紙を読んだ祐介くんはしんみりと話す。