なくした時間にいてくれた

たくさんの『ありがとう』が詰まっている手紙だった。

ありがとうと伝えたいのは私の方だ。私の妹に生まれてくれてありがとうと。

頼りにならない私のことをいつも『優しいお姉ちゃん、大好き』と言ってくれてありがとう。

私はいつも花実に支えられてがんばってきたんだよ。花実がいつも見ているからがんばらなくちゃと思って、がんばってきた。

花実がいなかったら、がんばることをしないで、何でも諦めていたと思う。

花実ほど勇気を持てなかったけど、花実のように勇気を出そうと思った。花実がいなくなってからはたくさんの勇気を出したよ。

勇気を出すことを教えてくれたのは花実だもの。

本当にありがとう。


花実はどんな思いでこの手紙を残したのだろう。これは花実の遺書になる。

父と母には伝えることが出来なかったから私にだけ残した。

でも、本当は元に戻れると信じていたに違いない。どうして花実だけが戻れなかったのだろう。私ではなく花実に戻って欲しかった。

花実にいて欲しかった。