なくした時間にいてくれた

柴山くんは頬伝う涙をハンカチで押さえて、涙を堪えようと唇を噛み締めていた。


「写真、もらってくれてありがとう」

「一生の宝物にします」

「あの、でも……」

「はい?」


こんなことを言うのはどうなのかなと思い、言い淀んでしまったけど、柴山くんの未来を思って伝えることにした。

多分花実も同じように言いたいと思うから。花実を想ってくれるのは嬉しいけど、彼はこれから高校卒業して大人になっていく。

いつまでも花実のことに縛られていて欲しくはない。

前を向いて歩いていって欲しい。

花実以外の人を好きになって、いつか結婚をして、素敵な家庭を持って欲しい。

どんな未来が待っているか分からないけど、確実に未来はあるから、がんばっていって欲しい。


「ずっと花実だけを想わなくていいからね。柴山くんはこれからいろんなことを経験していって、いろんな人に出逢うと思うの。だから、花実の分までがんばって自分の未来に向かっていってね」