なくした時間にいてくれた

花実の想いは一方通行ではなかった。

花実、私のそばにいる?

柴山くんの言葉を聞いた?

良かったね、柴山くんも花実のことが好きだったって。


「柴山くん、ありがとう。花実ね、この写真を撮った日、帰ってきてすごい喜んでいたの。好きな子と写真か撮れたって」

「え、好きな子?」

うん、花実も柴山くんが好きだったの。だから、私はこの写真を届けたくて……えっ……柴山くん?」


柴山くんの大きくて澄んだ目から大粒の涙がこぼれ落ちていた。

こんなふうに高校生の男の子が泣くのを初めて見たから戸惑ってしまったけど、花実と柴山くんの気持ちを思うと切なくなって、苦しくなる。

同じ気持ちを持っていても二人はもう二度と会えない。どんなに会いたいと願っても会えない。

私は柴山くんにハンカチを差し出した。そのハンカチで涙を拭う。


「あり、がとうございます……この写真頂きます。花実さんの気持ちが聞けて嬉しいです。本当にありがとう……ございます……」