なくした時間にいてくれた

「同じくらいの年の女の子がそこにいて、手招きするんだよ。そっちじゃなくて、こっちに来てと。なんでこっちはダメでそっちなの?と聞いたら、お姉ちゃんが一人になっちゃうからって、言われた」

「お姉ちゃん? それってまさか……」


私はその女の子のことを想像した。浮かんでくるのは一つの顔。


「それにお姉ちゃんにお願いされているの、岡くんを助けてと言っているのって言うんだよ。だから、もしかして君は花実ちゃんなの?と聞いたら、その子は頷いた。それでも本当に花実ちゃんかどうか確信は持てないし、もしかしたらこれは罠で呼ばれている方に行ったら悪いことが起こるんじゃないかとも思って身動き出来ないでいたんだけど……」

「だけど、どうしたの?」

「早くしないと死んじゃうよ! 死にたいの? 私の分まで生きてよ! お姉ちゃんをもう悲しませないでよと言われて、本当に花実ちゃんだと思って呼ばれた方に行った。そしたらさ、ありがとうって笑ってその子は消えてしまって、俺もそこからは意識がなくなって、気付いたら病院にいて、家族が心配そうに俺を見ていたんだ」