なくした時間にいてくれた

「あったかい。岡くん……」


伝わってくる温かさで生きていることが実感できる。

良かった、生きていてくれて。

私の目からは涙がぽろぽろと溢れだし、スカートに染みが出来ていった。

生きていてくれることが本当に嬉しい。

良かった、良かった……。

花実……やっぱり花実にも生きていて欲しかった。

その時、戻ってきたお兄さんが泣く私を見て、驚いた声を出す。


「えっ？ どうした？ 何かあった？」

「あ、いえ。ご、ごめんなさい。生きていると思ったら嬉しくて……それと妹を思い出してしまって……」

「ああ、そうか。妹さんを事故で亡くされたんだよね。祐介から聞いているよ。ごめんね、妹さんのことを思い出させてしまって」

「いえ、そんな！ 私が勝手に思い出してしまっただけです。謝らないでください。でも、本当に良かったです」


お兄さんからもらった温かい紅茶を飲んでいると、岡くんの両親が入ってきた。まだちゃんと挨拶をしていなかったことを思い出して、改めて頭を下げて名乗った。