なくした時間にいてくれた

まだすべての処置が終わらないから、手術室からは出てこない。

岡くんの家族は医師からの説明があるからと呼ばれた部屋に行ってしまい、私は一人ぽつんと残された。

岡くんが事故にあったときの様子は警察から聞いたことをお兄さんが話してくれた。

家から自転車で最寄り駅に向かっていて、交差点を青信号で岡くんが渡っていたら、赤なのが気付かなかったのか信号無視をした車が突っ込んできて衝突したそうだ。

車の運転手は岡くんに気付いて、慌ててブレーキを踏んだけど、間に合わなかったという。頭を打ったと聞いたから本当に心配だった。

今もまだ岡くんの顔を見るまでは安心できない。

私は家に帰るのが遅くなることを連絡して、岡くんに会えるのを待った。顔を見ないと安心して帰れない。


「あ。あの……」

「あら? もしかして、患者さんの彼女さんかしら?」


寝ているままの岡くんのベッドを別の部屋に移動させようと押して出てきた看護士さんの一人が私に気付いて、足を止めた。