なくした時間にいてくれた

お兄さんは心配そうに『手術中』とランプが付いている部屋を見る。私も同じように見た。

出血がひどいって、どんな大怪我なんだろう。命は大丈夫なのかな。

もっと詳しく聞きたいけど、青ざめた顔しているお兄さんが話さない以上、私からは聞けなくてその場に呆然と立ち尽くすしかなかった。

お兄さんに座っていてと言われて、長椅子に座るものの落ち着かなくてまた立ってしまう。だけど、立っていても通る人の邪魔になってしまっていたので、また座った。

何も出来ない今、私は祈ることしかできなかった。

ひたすら、お願い、お願い、お願い……と何度も祈った。

神様、お願い!

岡くんの命を奪わないで。

私の大切な人をこれ以上奪わないで。

花実、岡くんを助けて。

お願い。

お願いだから。

岡くん……。


最後に岡くんと連絡が取れたのは今日の朝だった。今日のことをよろしくねと伝えて、あとでねとやり取りをした。

いつもと何も変わらなく、その後に事故が起きるなんて予想もしていない。事故はいつだって予想が出来ないものだから、どんな時でも油断は出来ないな。