なくした時間にいてくれた

どんな状況かは分からないけど、最悪な状況だったらと考えると怖くなって、手が震えてきた。

花実、お願い!

岡くんを助けて!

岡くん、お願い!

私を一人にしないで。

タクシーの窓から見える外に向かって手を合わせて、岡くんの無事を祈った。

病院に着くまでの時間がものすごく長く感じた。早く岡くんの近くに行きたかった。

受付で岡くんのいる手術室を聞いて行くと、三人の人が手術室の前に立っていた。岡くんの両親とお兄さんだった。

私がゆっくり近付くとお兄さんが気付いてくれたので、頭を下げる。

お兄さんは私のそばに来て、「松本さん?」と訊ねる。


「はい、初めまして。松本楓花と申します」

「うん、初めまして。弟から松本さんのことは聞いています。俺は、兄の英介(えいすけ)と言います」

「あの、おかく、祐介くんの様子は?」

「なんか危ない状態らしく……出血がひどいみたいで今輸血をしながら手術をしているようなんだ」