なくした時間にいてくれた

受験生にはクリスマスもお正月もないとはよくいうけれど、クリスマスイブの夜の夕食後に母が作ってくれたケーキを出してくれた。

我が家のクリスマスケーキは小さい頃から毎年母が作ってくれていて、私と花実もデコレーションを手伝ったりしていた。


「ケーキくらいゆっくり食べてね。それからまたがんばってね」

「うん、ありがとう。お母さんのケーキ、美味しいから食べたらがんばれる気がしてくる」

「そうなるといいけど」


母は花実の分も取り分けて、仏壇に置いていた。花実も母の作るケーキが大好きだった。「美味しい!」と嬉しそうに食べる花実の顔が思い浮かぶねと話ながら食べる。

たまに花実の話を私たち家族はするけれど、そのたびにしんみんとしてしまって母は泣く。

父はそんな母の背中をいつも優しくさすり、私はその様子を横目で見ながらそっと部屋に行って一人で泣く。

私たち家族の心に花実はいつもいる。我が家で一番元気でおしゃべりだった花実がいなくなって、静かな家になってしまった。