なくした時間にいてくれた

まだまだ勉強が足りなく、出来なかった問題の見直しもしなくてはいけないから、本当はのんびりしている時間はない。

でも、岡くんとゆっくり話がしたかった。夜に頑張れば少しの時間のんびりしても大丈夫だよね? と甘い考えの中でここまで付いてきた。


「これからまだまだ頑張りたいと思うんだ」

「うん、私も同じことを思っているよ」


岡くんはテーブルの上で両手を絡めて、体を前に出した。近くなった距離に私は逆に椅子の背もたれに背中をピタッと付けて、姿勢を正した。

何かを告げようとする岡くんの真剣な眼差しにたじろいでしまう。

何を言おうとしているのだろう。

店内に客は私たちしかいない。先ほどまでカウンター席に大学生くらいの男性がいたけど、帰ってしまった。

マスターもどこかに行くようなことを言って出ていって、奥さんがカップなと洗っている姿が見えるだけだ。

静まる店内に聞こえるのはジャズ音楽だけ。