夕日が沈みかけて、薄暗くなった仙台港に足を運んだ。


鶴さんが最後に来た場所。


本人の体はここには無くても、彼が最後にここにいたのは事実だ。
魂があるなんていう表現は正しくないかもしれないが、彼の心があるような気がして。
それでここに来たのだ。


鶴さんはお花には興味の無い人だったから、私の好きなお花を数種類集めた小さな花束を買ってきた。


鶴さんには見えてないかもしれない。
私の自己満足かもしれない。


それでも彼が七夕の夜に私に会いに来てくれたことで、生きる力に変わったのは確かだった。




鶴さん。もう私はあなたを探しません。
私はあなたとの思い出を抱えきれないほど持っているから。
それで十分なのです。


もう姿は見せなくてもいいから、私が生きていく姿を遠くから見守っていてください。




はるか彼方の海の向こうを眺めて、鶴さんに心配をかけないように笑顔を作った。


ひとりで生きていく決心。



私は覚悟を決めた。










おしまい。