慣れない左手の指輪の感触こそが、私の幸せの証だと言える。


もう言葉を交わせなくても、守ってもらえなくても、笑い合えなくても、家族になれなくても、ケンカもできなくても、抱きしめてもらえなくても、


愛し合えなくても。


彼との記憶は、全部私の中にある。









「小春さん、ありがとう。僕も幸せだった。君に会えたことこそが、僕のすべてだったよ。ありがとう。ありがとう……」









鶴さんが「ありがとう」を繰り返す中で、私はゆっくりと眠りについた。