鶴さんの口調は、確かに至って冷静だった。
もうすべてを受け入れて、悪あがきするのはやめたような言い方。


「小春さん。この5年、大丈夫だった?ずっとひとりでここに暮らしてたんだよね?危険なこととか無かった?ちゃんとご飯は食べてる?眠れてる?」


鶴さんがここまで私を心配してくれているのには、理由があった。
私はこの5年で、10キロも痩せてしまったからだ。

きっと、彼の記憶にある私の姿と今の私の姿が一致しないのだ。
やせ細って元気のない私を気遣ってくれているのだ。


彼を安心させる言葉を口にするべき場面なのは分かっていた。
だけど、5年という年月がそれをさせてはくれなかった。


「大丈夫じゃないよ」


ポツリとつぶやいた答えは、嘘じゃなかった。


「突然いなくなって、行方不明になって、探しても見つからなくて。鶴さんがいなくなったこの部屋で、ずっと帰りを待ってたんだよ。時間はかかってもいいから、いつか帰ってきてくれるって信じて待ってたの。ひとりで食べるご飯は味がしないし、ひとりで眠るベッドはいつも冷たくて。鶴さんがいなくなってから、私はずっとひとりぼっちだったんだからっ」


最後の方は、もはや半分訴えるような言い捨てるような、可愛げのないものになってしまった。


泣きたい。
でも、それだけは本人の前でしちゃダメ。

鶴さんだって、死にたくて死んだわけじゃないのだから。


グッと唇を噛んで、涙をこらえた。