「何するんですか」

彰人は冷たくそう言っている。

一番怒っている時の冷たさ…

そのおばさんはとても驚いていた。

「何するって…なんのことや分からへん。何もしてへんやんけ」

「佐々木さんどないしたん」

「分からん、このにいちゃんが急に」

分からなくて当たり前なの…だって見えていないの…

彰人はイライラしていた。

「なんで人が座っている席にカバンを放り投げたんですか!」

「はぁ?誰もおらんかったやんけ!」

「な…どういう意味だよ!」

「彰人!どうしたの、何騒いでるの?」

彰人の母が驚いている。

「母さん、この人が幸菜が座っている席にカバンを放り投げて…」

違うのおばさん…この人たちには私が見えないの…

「誰もおらんかったやんか!」

「だからなんで…!」

「彰人!やめて!私なら大丈夫だから!」

やっと声が出た。

「でも幸菜ちゃん」

「おじさん、大丈夫だって…彰人、座って?お願い」

必死で言った

「幸菜…」

「彰人。私旅行初日からゴタゴタ起こしたくないの」

そう言ってニコッと微笑んだ。