先生は結局、あたしたちの教室を覗き込むことなく素通りしていった。

「里ちゃん……」

あたしは里ちゃんの腕をそっと支えてロッカーから出てくるようにうながした。

足を震わせながら出てきた里ちゃんはうつむいて黙ったままあたしの腕を自分の腕から離した。


「これで……分かった?あの3人の恐ろしさに」

潤んだ瞳であたしを見つめる里ちゃん。


「……ごめん、里ちゃん。あたし……」

言いたいことがたくさんあるのに、言葉が喉の奥に張り付いて出てきてくれない。

「謝らないで。全部わかってるから。優亜がロッカーを押さえてあたしが出られないようにしたのにも理由があるって。……もしかして……あたしの小学校時代の写真でも見せられて脅された?」

「……っ」

「だよね。なんとなくわかってた。あの写真をいつか脅しに使われるんじゃないかって。だから綾香ちゃん達には絶対に逆らわずにいたの」

そう言うと里ちゃんの目から大粒の涙が溢れた。

「ごめん、優亜。もうあたし……この学校にいる自信ない」

「里ちゃん……」

「あたしだけ逃げてごめん。でも、もう限界。ずっとあの3人をうまく避けて学校生活を送ろうなんて甘い考えだったの。あたしはあの3人がいる限り、永遠に楽しい学校生活なんて送れない。それどころか、こうやって……恥ずかしくて情けない目にあう」

嗚咽交じりに涙を流す里ちゃん。