「で、アンタはどうすんの?日野田のことを思うなら選択肢は一つだと思うけど」
綾香がクックと喉を鳴らして笑う。
その姿はまるで悪魔のようだった。
見た目は人間だけど、血が通っていない。
里ちゃんも言っていた。綾香たちには何を言ってもムダだと。
今、その意味をようやく思い知らされた。
「里ちゃん……。ごめん……ごめんね……」
あたしが里ちゃんの立場だったら、あんな写真をネットにバラまかれるのだけは絶対に避けたい。
悔しいけれど、綾香の言う通りあたしに残された選択肢は一つしかなかった。
あたしは里ちゃんのいるロッカーにゆっくりと歩みを進めた。
そして、歯を食いしばってマミとともにロッカーを両手で押さえた。
「優亜……?何してるの……?」
涙声の里ちゃんに胸が張り裂けてしまいそうになる。
「ごめん、里ちゃん。ごめんね……」
「どうして?どうして――!!」
里ちゃんがロッカーの中で泣き崩れている。
あたしはもう里ちゃんに謝ることができなかった。
抑えようと思っても目からは大粒の涙がとめどなくあふれる。
里ちゃんは抵抗を辞めた。ロッカーの中からはすすり泣く声だけが聞こえてくる。
「あー、抑えんの疲れた。もう出そう」
しばらくすると、マミはそう言ってロッカーを開けた。



