若菜先生に期待していたわけではない。

でもまさか、こんな仕打ちを受けるとは思ってもいなかった。

「……はい」

ビショビショの上履きに足を入れる。

靴下が一瞬にして水を含み、足の裏にベチャッとした不快な感覚が広がる。


グッと拳を握りしめたまま自分の席に向かう途中、綾香と目が合った。

綾香はニヤッと意地悪そうな笑みを浮かべると、満足したようにあたしから目をそらして前に向き直った。

――どうしてこんなことができるんだろう。

一体何のために?こんなことして何が楽しい?

心の中で何度綾香に問いかけてみても答えなんて返ってくるはずもない。

足の裏が冷たく、気持ちが悪い。

目頭が熱くなる。泣いたらダメ。

泣いたら綾香たちに負けたことになる。

あたしは絶対に負けない。

美亜の為にも……絶対にイジメになんて負けない。

あたしは心にそう誓った。