「さっさと洗えよ」
あたしと柴村さんは食材には指一本触れさせてもらえなかった。
それどころか洗い物や片付けを強引に押し付けられ、ずっと流し台に立たされ続けた。
周りを見渡すとどの班も協力し合って楽しそうに料理を作っている。
あたしたちの班で楽しそうなのはあの3人だけ。
「ねぇ、みやび。これどうやって切るの?」
「うん?これはみじん切りでいいんじゃないかなぁ」
「あたしこの時期に指怪我したらヤバいからみやびやってくれる?」
「うん!まかせて」
みやびに包丁を渡す綾香。
「あっ、そっか~。綾香もうすぐピアノのコンクール?」
「そう。マミとみやびも見に来てよね」
「いくいく~!!今度時間とか教えてよ。うちら、横断幕つくってくから!」
「ハァ~?そんなの目立つし誰もやってないから」
「マミ、ピアノのコンクールに横断幕はダメだよ~」
「あはは~だよね~」
目を見合わせて笑い合う3人を横目にあたしはぐっと唇を噛みしめた。



