「柴村さんは大人しいし、学校でもほとんど口を開かなかった。声を聞くことが珍しいぐらい。もちろん友達もできなかったし、いつも一人でいた。そんな柴村さんが綾香ちゃんたちにイジメられるようになって……クラスのみんなはホッとしてた」
「柴村さんがイジメられている間は自分がイジメられないから?」
「そう。残酷で最低だって思うよね。でも、あたしもそうだった。柴村さんがイジメられている間は自分は大丈夫だって……そんな風に思ってた。柴村さんは綾香ちゃんたちがどんなにイジメてもあまり反応しなかったから綾香ちゃんたちにとっては面白くなかったんだろうね。イジメは終わることなく……今も続いてる。中2と中3では柴村さんと綾香ちゃんたちはクラスが違ったからイジメは収まったけど、高校で今年同じクラスになってからは……またって感じ」
里ちゃんは膝を抱く腕に力を込める。
「本当は誰かがイジメられているのを見ているのは嫌なの。あたしだってイジメられた経験があるから。だけど……、ううん、だからこそあたしはもう二度とイジメられたくないって強く思うの。もうイジメられるのは嫌なの」
イジメられていた過去を思い出したのか、里ちゃんの声がかすれて鼻声になる。
「里ちゃん、ごめん。つらいこと思い出させちゃったね」
里ちゃんの背中を撫でると、里ちゃんは膝に顔をうずめる。



