「あっ、うん。スマホって持ってるよね?番号教えてもらえない?」

ポケットから取り出したスマホを柴村さんにかざすと、柴村さんの表情が曇った。

「スマホ……ですか。すみません……。私、持ってないんです」

「え?そうなの?」

「すみません。今まで連絡を取り合うようなお友達がいたことがないので私には不必要なものだったんです」

「そっか……。そうなんだ。なんかごめんね」

柴村さんの言葉になんて返したらいいのかわからずに謝ることしかできない。

今までつらい思いをたくさんしてきたんだろう。

あたしがほんの少しでも柴村さんの気持ちを軽くしてあげられたらいいな。

そんなことを思っていた。

「謝らないでください。では、買ったらすぐに逢沢さんに報告しますね」

「うん!ありがとう」

また敬語遣ってる。

柴村さんの堅い言い方がおかしくてくすっと笑う。

そんなあたしにつられて、柴村さんがほんの少しだけ笑ったように見えた。

大丈夫だ。

イジメになんて絶対に負けない。

あたしはこのとき、確かにそう心に誓った。