ネットで最強のイジメっ子と揶揄されていた優亜ちゃんと同じ高校に偶然静子ちゃんが通っていたのはカンナにとってすごくラッキーなことだった。

でも、優亜ちゃんは自分がしたことをすっかり忘れて名前まで変えていい子ちゃんに成り下がっていた。

だけどイジメ返しを始めてからは少しづつ昔を思い出してくれたみたいだけど、やっぱり最強のイジメっ子とまではいなかったから残念すぎる。

過去のことを忘れているにしろ、同級生を二人も自殺に追いやってしまったことや妹や母親を自分のせいで亡くしたことに潜在的に罪の意識を背負っていたのかもしれない。

「死臭ってねぇ、魚の内臓を腐らせた時の100万倍くらいの何とも言えない強烈な匂いだよ?しかもね、人間が死んでからしばらくたつと内臓や血液が体から漏れ出してウジ虫が湧いちゃうの!」

「えっ……」

「そ、そうなんだ……?」

隣の席の女子高生に向かって説明すると、二人は目を見合せて顔を歪めた。

……もう!せっかく教えてあげたのに変なリアクションするんだから~!


「でもさ、イジメって本当に怖いよね~?」

ポテトをつまみながら隣の女子高生の会話に耳を澄ませる。

「あたし、小学校の時イジメられてたんだけどいまだにあの頃のこと夢に見るもん」

「だよね」

「しかもね、こないだ通い始めた予備校にその当時あたしをイジメてた女がいたの!!」

「マジ?」

「うん。あっちはさ、自分がしたことなんてすっかり忘れて笑顔で久しぶり~とか言って話しかけてきてさ。超ムカついたんだけど。あたしはアンタにされたこと一つも忘れてないっつーの!」

吐き捨てるように言う彼女の目に宿る黒い影。

ふふっ……ここにもいた。

「ねぇ、だったらイジメ返ししたらどうかなぁ~?やられっぱなしでいいわけないよねぇ?」

「えっ……?」

彼女は困ったように笑う。

「イジメ返しするならカンナが手伝ってあげる。その子にされたことを全部思い出してみて?あなたが受けた苦痛以上の痛みを味合わせてやるの。倍返しなんかじゃ足りないよ。100倍にして返してやらない?」

カンナの言葉に彼女の瞳が左右に動く。

大丈夫。カンナに任せて。

「イジメ返し、するよね?」

カンナの言葉に、彼女は大きくうなづいた。


【END】