「あ~疲れたぁ~!じゃあ、カンナはもういくねっ!!ちょっとだけ苦しむかもしれないけど許してね~!」

カンナはにっこりと笑うとスキップ交じりに地下室から出て行った。

鍵はかけていない。

スタンガンの効力がわずかに切れ、体が動かせるようになってきた。

柴村さんを助けなくちゃ……。今度はあたしが柴村さんを……!

使命感にかられ、必死に手を伸ばす。

「しば……むら……さ……ん」

這いつくばるように進み、柴村さんの手をようやく握ることができた。

必死に柴村さんの体を揺らす。

「おね……がい……目を覚まし……て!」

どうしてだろう。何故かめまいがして頭痛までひどくなってきた。

呂律が回らない。

「静子……!!」

最後の力を振り絞って叫ぶと、柴村さんはゆっくりと目を開いた。

「逢沢……さ……ん……」

「ごめん……あたし……あたし……」

ギュッと柴村さんの手を握り締めて涙を流す。

いつの間にか部屋には白い煙が充満し、立ち上がることは不可能だった。

「静子って……呼ばれて……嬉しかった……です」

柴村さんはそう言って肩で息をしながらもわずかに表情を緩めた。

「優亜……友達に……なってくれて……ありがとう」

そう言い残すと、静子は目を閉じた。閉じた目から一筋の涙が頬を伝う。

握り締めている手のひらから力が抜けた。

ごめん。本当にごめん。

どうしてこんなことになってしまったんだろう。

どうしてもっと早く気付かなかったんだろう。

どうして……。

きっともっと早く気付いていれば、何かを変えられた。

変えなくてはならなかったんだ。

全ての悲劇の始まりは、あたしが小学校の時に行ったイジメだった。

ごめんなさい、本当にごめんなさい。

大粒の涙が溢れる。

あたしは全てを自分の手で壊してしまっていたんだね……。

ごめんなさい。傷付けてしまったみんな、本当にごめんなさい……。

後悔と絶望が入り混じる中、あたしは意識を手放した。