柴村さん……!!

痙攣が収まり眠っているように仰向けに倒れている柴村さんに必死に手を伸ばす。

でも、あと数センチのところで届かない。

バカだね、あたし。

今になってようやく柴村さんの言葉の意味を理解するなんて。

イジメ返しをしているあたしに、柴村さんは忠告した。

『本当に私のことを思ってくれているなら、もうやめてください!西園寺さんのことを信じないでください。彼女は――』

カンナの恐ろしさも柴村さんは知っていたんだ。

あの言葉を最後まで聞いていたら何か変わったんだろうか?

『イジメもイジメ返しも負の連鎖しか生みません。どこかでその連鎖を断ち切らなくてはならないんです』

イジメられっ子だった柴村さんは弱者だと思っていた。

でも、違った。

彼女はきっと沢木綾香たち3人やあたしなんかよりも強かった。

弱かったのはあたし達の方。

さっきだって、柴村さんはあたしを助けようとしてくれた。

『逃げて』そうあたしへ合図を送ってくれたんだ。

カンナのことを柴村さんは恐れていた。

それでもあたしを助けようとしてくれたのは、きっと……。

【柴村静子:私は逢沢さんという友達がいればそれだけで十分です】

柴村さんからのメッセージが頭をよぎる。

「……っ……」

涙が溢れた。

あの言葉は嘘偽りのない本心だったんだね。

スマホをすぐに買ってきてくれたのだって……友達ができてうれしかったから。

それなのに……あたしは柴村さんの友達第一号だったのに。