「逢沢(あいざわ)さん……?」
突然立ち上がったあたしに、周りの注目が一斉に集まる。
教室内の異変を感じた綾香がこっちを振り返る。
蛇に睨まれたカエルそのままのあたしは震える手をぎゅっと握り締めた。
「――そういうの、もうやめようよ」
ハッキリ言ったはずの言葉は消え入りそうなほど小さくて震えていた。
「は?何よ。聞こえないんだけど」
綾香がむっとしたように聞き返す。
「だから……やめよう。調理実習の班が気に入らないなら、あたしが交換するから」
元々こうなってしまった原因は調理実習の班決めにある。
柴村さんが班に入るのが嫌なら、あたしが交換すればいい。
そうすれば綾香たちも納得するかもしれない。
あたしはそう考えていた。



