夢……なの？

――お姉ちゃん、やめて。

お願いだから、もうやめてよ!!

意識に白いもやがかかる。

きっとこれは夢だ。

妹の美亜の声がくぐもって聞こえてくる。

美亜が死んでからというもの、時折こういう夢を見る。

美亜が必死になって何かをやめろと訴えかけてくるのに、何をやめたらいいのか最後までわからない。

そして、目が覚める寸前、首を吊った美亜が目を開けてこう叫ぶ。

――ヒトゴロシ!!!

「――美亜!!」

目覚めた時には全身に滝のような汗をかいていた。

「夢……か」

嫌な夢を見てしまった。

時計の針は夜中の２時を指している。

何気なくスマホを手に取り、画面をタップする。

「あっ……」

里ちゃんからメッセージが入っていた。

毎日、その日にあったことを里ちゃんに連絡していたのにずっと返信がなかった。

もちろん、イジメ返しのことも里ちゃんには伝えてある。

里ちゃんはきっとあたしのイジメ返しを応援してくれているはずだ。

それなのに、里ちゃんからのメッセージは無常だった。

『返事が遅れてごめんね。優亜、お願いだからイジメ返しなんて今すぐやめて！あたしのことを思うなら本当にやめて。今日も朝のニュースで渡部さんの事件が取り上げられてたよ？あたし……優亜が怖い』

スマホを持つ手が小刻みに震える？

どうして分かってくれないんだろう。

里ちゃんも柴村さんも……どうしてイジメ返しをとめようとするの？

そんな弱気だからイジメの加害者がつけあがるんじゃない。

「２人がやらないならあたしがやるしかない」

決意するようにそう呟き、あたしは再び目を閉じ夢の世界に落ちていった。