「ねぇ、次は沢木さんで最後でしょ?あたしね、色々と考えたんだけど……彼女からピアノをする機会を奪ってやりたいって思ったの」

「ピアノ~?」

「そう。だってさ、イジメの主犯は沢木さんでしょ?沢木さんにはちゃんと罰を受けてもらわなくちゃだもん。カンナもそう思わない?」

「思うよ~!!じゃあ、今回は静子ちゃんにお手伝いしてもらう?」

「お手伝いって?イジメ返しの?」

「もちろん!」

「そんなの無理だよ!だって……」

『そんなことをしたら……あの3人と同じです。イジメもイジメ返しも負の連鎖しか生みません。どこかでその連鎖を断ち切らなくてはならないんです』

柴村さんの言葉を思い出す。

あたしはあの3人を痛めつける目的でイジメ返しをしているわけではない。

イジメ加害者である3人に気持ちを改めてほしくて仕方なくやり返しているだけ。

3人が更生すれば、あたしだって柴村さんだって里ちゃんだって楽しい学校生活を送ることができる。

「ねぇ、優亜ちゃん?ぶっちゃけ、静子ちゃんのこと嫌いになってきた~?」

「え?」

「カンナはね、ちょっとムカつくの~!だってさ、優亜ちゃんは静子ちゃんの為にイジメ返しを頑張ってるのにって。ねぇ、そう思わない~?」

カンナが何かを見透かしたような目をあたしに向ける。

「……正直、思うよ。どうして分かってくれないんだって」

――だからずっとイジメられ続けてるのに。

「とにかく、次で最後だから。カンナも協力してね」

「了解~!」

沢木綾香へのイジメ返しを考えると今からワクワクしてくる。

「ねぇ、精神的におかしくなってる若菜先生にもっともっとゆさぶりをかけてみない?」

「そうしよ~!カンナ、楽しみ~!」

計画を練っているこの時間が至福の時。

沢木綾香が泣き叫んでいる場面を想像すると、身震いがしてきそうなほど興奮した。