「イジメ返し大成功だね!!」

車のトランクに押し込まれた小山田マミの姿を見ていると、体中が興奮に包み込まれた。

あんな興奮今までで味わったことがない。

「ねぇ~!でも、マミちゃんのパパとママってば本当に手癖が悪いんだからぁ~!」

マミの両親はパチンコで隣の席に座った男の財布を置き引きした。

その人物はこの辺り一帯を取り仕切る裏社会の人間でカンナのお父さんともつながりの強い人だった。

財布の中の小さな紙に書かれたリストには政治家との金銭のやり取りが記録されている。

その中にカンナのお父さんの名前もあった。

「小山田さんたち、これからどうなっちゃうの?」

「うーん……、体は健康そうだしどこかに売っちゃうのかも~?それか……どっかに埋めちゃうか?カンナにもわかんないなぁ~!でもこれでマミちゃんへのイジメ返しは成功だねぇ~!イエーイ!」

ぴょんぴょんと飛び跳ねるカンナに微笑む。

「あっ、そういえばさぁ、マミちゃんに会う前に駅前で会った子って誰なのぉ~?」

「あぁ、あれは小学校の時同じクラスだったゆずって子」

「あの子、派手なタイプの子だったよねぇ~?優亜ちゃんってああいう子と仲良しだったのぉ~?」

「それが……あんまりよく覚えてないの。小学校の時、妹を亡くしてから……その頃の記憶が断片的にしかなくなってて」

「へぇ~!早く思い出せたらいいのにねぇ」

「うん」

仲が良かったのかどうかは別として、顔と名前だけはハッキリと覚えてあたしはすぐに『ゆず!』と声をかけた。

ゆずはあたしに気付くなり顔をしかめて明らかに困惑したような表情を浮かべた。

「……いっ……ごめんなさい、あたし急ぐから」

逃げるようにその場を後にしたゆず。

でも、その理由は予想がついた。

妹を自殺で亡くし、転校していったあたしになんて声をかけたらいいのかわからないのかもしれない。