イジメ返し2 ~恐怖の復讐劇~

そのとき、なぜかぞくっと背筋が冷たくなった。

なんだろう、この違和感は。

逢沢優亜ってこんな顔だったっけ……?

目が座り、口の端が片方だけわずかに持ち上がっている。

これから何か楽しいことが待っているかのようにどこかワクワクしているようにも見える。

「さっきリサイクルショップにいたのはどうして?もしかして渡部さんに借りたものでも売りに行ったの?」

逢沢は嫌悪感を隠すことなく尋ねた。

「……は?だったら?何をしようとアンタには関係のないことでしょ!」

「そうだね。関係ないよね。あたしと小山田さんは」

逢沢のくせになんで上から目線で話しかけてくるわけ?

こいつ、マジでウザい。

「マジうっざ。お前、マジでなんなの?」

逢沢のYシャツの襟もとを掴んですごむ。

「苦しいんだけど。離してくれない?」

「嫌だね」

徐々に赤くなっていく逢沢の顔を見てニヤリと笑うと、次の瞬間、頬にものすごい衝撃を感じた。

「いたっ!」

叫んでからようやく気付いた。今……逢沢……あたしの頬を叩いた?

「てめぇ!!」

髪を掴んで引きずり回そうと手を伸ばすと、その手は振り払われ、その代りに今度は顔面に強い衝撃を感じた。

「っ……!!」

「どう?痛いでしょ?あたしと里ちゃんと柴村さんの痛みはね、こんなもんじゃないの。あなたたちにそれを教えてあげる」

逢沢はそう言うと再び体をひねり、あたしの顔面にためらうことなくバッグをフルスイングでぶつけた。

その拍子に手からバッグが離れ、中から茶色い財布が飛び出した。

「なっ……どうして……」

鼻血がポタポタとアスファルトにシミを作る。

「優亜ちゃん、かっこいい~!さっすがぁ~!」

西園寺カンナがキャッキャと嬉しそうに飛び跳ねる。

「どうして?理由なんて自分が一番よくわかってるでしょ?これはね、あなたたちへのイジメ返しなの」

「イジメ返し……?」

「そう。イジメているほうが強くてイジメられている方が弱いなんて思い上がりもいいところ。あなたたちに色々されても、あたし達は理性で自分の感情を押さえて我慢していたの。でも、今みたいに理性を解き放てばあなたと一対一で殴り合っても負けたりはしない」

「くっ……」

「ふふっ。滑稽だね。立場が逆転すると、何も言い返せないんだから」

鼻の中の太い血管が切れてしまったのかもしれない。

鼻血は止まらず、それをぬぐうのが精いっぱいで逢沢の言葉に言い返せない。