「――お前、しゃべれないのかよ!?なんとか言えよ!!」
綾香はそういうと、柴村さんの椅子を蹴りあげた。
その拍子に柴村さんが床に転げ落ちる。
そのとき、まくりあがった右足の太ももあたりに大きな傷が見えた。
それはほんの一瞬の出来事だった。
彼女は今まで見たことがないくらいの勢いでスカートを直した。
長い前髪の隙間から綾香の様子を伺っている。
「気持ち悪いんだよ!!」
綾香は柴村さんの背中を蹴り上げる。
柴村さんは床にうつぶせに倒れこみ、左手で背中を抑える。
すると、マミがニッと笑った。
それは悪意のある笑みだった。
「ねぇ、日野田ちゃん!!先生がこないか、教室の外で待機して見てて!来たら時間稼ぎしておいて」
「えっ?」
顔を引きつらせる里ちゃん。
「いいから早く!!それから、アンタも後ろの扉開けらんないように見ててよね~!」
手際よく近くにいるクラスメイトに指示を出すマミ。
いったい何が始まるんだろうかと不安が募る。



