「柴村さんにも問題があるのかも」

今まではずっと柴村さんの外見で人から避けられていると思っていた。

でも、実は彼女の言動の一端もイジメを増長していたのかもしれない。

「ん~?何か言った~?」

「ううん、何でもない。でも、今回もイジメ返しが成功してよかったね!」

「だねぇ~!やっぱりみやびちゃんちに電話したのがよかったねぇ~!」

みやびの家の内情は全てカンナが調べておいてくれていた。

だから、柴村さんの名前を使ってみやびの家に電話をかけ学校内でのイジメを告白した。

みやびの祖母は何度も孫の醜態をわびた。

あの電話をキッカケにみやびが追い詰められるのは分かってたけれど、一家心中にまで発展するとは思ってもみなかった。

「今日からは早速、小山田マミのイジメ返しに入ろう。里ちゃんにも早く学校に戻ってきて欲しいし」

「だね~!マミちゃんはね、とにかくお金にがめついの。お金の怖さを知ってもらおうねっ!」

「うん」

カンナと軽い打ち合わせをしてから教室に入る。

そういえば、次の時間が移動教室だったのをすっかり忘れていた。

「やばっ、遅刻しちゃう」

誰もいなくなった教室で小走りに自分の席に向かうと、途中、渡部さんのテーブルに腰が当たった。

「いたっ!」

ぶつかった拍子で渡部さんの机の上の花瓶が床に落下した。

花瓶は弾けて粉々になり、溢れた水が床を濡らす。

「あーあ。ま、いっか」

落ちている花をまたぐことなく踏みつけるように歩く。

あたしの頭の中にはもう小山田マミのことしかなくなっていた。