【渡部みやびサイド】

汚いトイレの床の上に正座させて柴村のわき腹を指でつねりあげる。

「うっ……うう!!」

苦痛に顔を歪める柴村の姿に心の中で叫んだ。

泣け。早く泣け!そして、許しを乞え!!

「アンタみたいな人間はねぇ、生きてる価値がないの。みやびはねぇ、それを教えてあげてるだけなんだから!」

「ごめんなさい……。許してください……」

親指と人差し指に渾身の力を込めると、「ひいっ!」と柴村が声をあげた。

膝の上においた両手を握り締め、顔を真っ赤にして歯を食いしばって痛みに耐える柴村
を冷めた目で見下ろす。

「もう学校くんなって言ったよね?それなのになんで毎日登校してくるわけ?あたし、アンタの顔みるだけで反吐がでるんだけど。アンタのせいであたしは不快な思いをしてるの。分かるぅ?」

「ご、ごめんなさい……」

「謝ってすんだら警察なんていらないの!!」

顔面を蹴飛ばすと、柴村は床に転がった。

唇が切れたのかもしれない。

「汚いんだけど!!ちゃんと掃除してから帰ってよね!」

口の端から鮮血交じりの唾を垂れ流す柴村を睨むと、あたしはトイレを後にした。