普段使用していない裏門から入り、教職員専用の駐車場の横を通り過ぎようとしたとき何かを抱えてウロウロとしている女性に気が付いた。
茶色い髪を一つに束ねた背の高いスリムな女性。
職員の中にはいないその女性が気になり、私は近付いていき声をかけた。
「何か御用でしょうか?」
振り返った女性は私と目が合うなり、柔らかく笑った。
その瞬間、頭を鈍器で殴られたような衝撃をうけた。
どうして?どうしてアンタが――!!
「こんにちは、若菜さん」
全身の血が逆流するかのような感覚。喉の奥がきゅっと詰まり言葉にならない。
ただパクパクと口を鯉のように開けたり閉じたりする私を彼女……瑠香は不思議そうに見つめていた。
「なんで……?」
絞りだした自分の声はまるで別人の声のように聞こえる。
「主人がお財布をテーブルに忘れて行ってしまったの。お昼が買えないんじゃないかって心配になってお弁当を作って持ってきたんだけど、どこが職員室かよくわからなくて」
「主人って……?」
何故か嫌な予感がする。
「私、結婚して関って名字になったの」
「関……?」
「関瑠香。主人の名前は関健太郎」
嘘、でしょ……?まさか、そんな!!
「いつも主人がお世話になってます」
にっこり笑った瑠香に腸が煮えくり返る思いだった。
私が愛した関先生の嫁がアンタだったなんて。
何が主人がお世話になってます、だ。
私より先に出会ったから結婚できたのに。
私の方が早ければ……そうすれば……。
「へぇ。そうなの……?確かに関先生にはいろいろお世話になってるわ」
にっこり笑って返す。



