深い眠りについていた。
まだ朝日が昇る前の薄暗い時間に枕元の電話が突然鳴り響いた。
その電話は長らく連絡を取っていなかった母からだった。
「ちょっ……どういうことなの!?ちゃんと説明してよ!!」
「だからね、お父さんの事業が失敗して大赤字なの。少し助けてよ。ねぇ、加奈子。お願いよ!」
電話口から聞こえる母の声は切迫し、涙ながらに必死になって訴えかけてくる。
「は?なにそれ。事業が失敗したって?あの人って会社勤めだったでしょ?」
「2年前にリストラされたのを機に、事業を立ち上げたの。先月突然資金繰りが悪くなっていろいろなところに借金して歩いたの。でも、それを返すあてもないのよ!」
「そんなこと急に言われたって私にはどうすることもできないから。それにそうなったら倒産するしか道はないでしょ?」
「そうはいかないのよ!あの人ったら闇金にまで手を出していて……。今日中に30万の利息を払わないと――」
「――嫌だから。私は絶対にお金なんて貸さない。だってあの人は私の本当のお父さんじゃないんだし」
「白状者!!アンタが今こうやって先生なんていう仕事につけたのは誰のおかげだと思ってるの!?お父さんが学費を出してくれたからでしょ!?」
「はいはい。それには感謝してる。でもね、私はあの人に貸すお金なんて1円たりともないんだから」
「そんなことも言ってられないのよ!借金取りはね、アンタの勤め先だって知ってるんだから!!」
母の叫びに脳がビリビリと痺れた。



