――イジメはエスカレートする。

一度その世界に足を踏み入れたら最後、引き返すことは難しい。

今がその状況だった。

「じゃあ、グループ決めしておいて。先生、ちょっと職員室に行く用事があるから。日野田さん、お願いね」

担任の若菜先生は来週行う予定の調理実習のグループ決めをクラス委員の里ちゃんに任せ、何の迷いもなく教室を後にした。

先生が出て行ってから数十秒は静かまりかえっていた教室も、先生が戻ってこないことを察すると無法地帯になる。

みんなが一斉におしゃべりをはじめる中、先生に頼まれた里ちゃんは渋々教壇に立った。

「みんな、聞いてください。来週の調理実習のグループ決めをしたいんですが、どうやって決めますか?」

里ちゃんがそういうと、一人の生徒がパッと手を挙げた。

「好きな人同士に決まってるでしょ」

発言したのは綾香だった。

クラスの中が綾香の言葉に耳を傾ける。