「答えは√23です」
けれど、予想に反して休み時間になる前に、逢沢さんは「先生」と手を挙げた。
どうせ間違った答えだろうとタカをくくっていたのに逢沢さんの答えは正しかった。
どう考えても彼女がすぐに回答できるレベルの問題ではないはずだ。
もしかしたら誰かが彼女に答えを教えたのかもしれない。
スマホで答えを教えるのなんて簡単だ。
でもだとしたらすぐに応えられるのはきっと……柴村静子しかいない。
ギリギリと奥歯を噛みしめたいのを我慢して「よくできたわね。まさかあなたに解けるとは思わなかったわ」と最大限の嫌味を付け加えて微笑む。
結局、今さら先ほどの自分の言葉を撤回するわけにもいかず、私は渋々授業を3分前に切り上げた。
黒板の文字を消す手に力がこもる。
「――沢木さん達3人は生徒指導室にきて。話があるから」
私は黒板消しを叩き付けるように元の位置に戻すと、教室を後にした。
「センセー、ごめんってば~!許してよ」
「みやびも反省してます!先生、ごめんねぇ」
小山田マミと渡部みやびがパチンっと両手を合わせる。
生徒指導室にやってきた3人から反省の色は1ミリも感じられなかった。
「あのねぇ、あなたたち2回目よ。前にも言ったでしょ?制服で夜出歩くなって。私服だったらよかったのに」
「本当にたまたまだったんだって。若菜ちゃんならあたしたちの気持ち分かってくれるでしょ?」
沢木綾香の言葉にハァと大きなため息をつく。
『若菜ちゃん』と私をあだ名で呼ぶのをこの子だけは許している。
この子は、昔の私によく似ている。そして、家庭環境もうりふたつだった。
だから応援したくなる。いつからかこの子に私の中学時代を投影させていた。



