「里ちゃん、すごいよ。どうやって綾香ちゃんの気を引いたの?」

コソッと里ちゃんに尋ねる。

里ちゃんは声を潜めながらも得意げになって答えた。

「綾香ちゃんってピアノが得意なの。将来はピアニストになって、メディアに取り上げられて有名になりたいってよく言ってた」

「うんうん。それで?」

「でね、今度隣町でピアノのコンクールが開催されるって教えてあげたの。そこにくるゲストも豪華だって話をしたら食いついてきてさ」

ペロッと舌を出していたずらっぽい笑みを浮かべる里ちゃん。

「コンクールがあるっていう話は本当なの?」

「本当に決まってるじゃん!そんなすぐにバレる嘘つかないって」

「そっか……。そうだよね」

「で、綾香ちゃんはピアノがうまいしチャンスだよ~っておだてたらノリノリになっちゃってさ。しばらくは機嫌いいんじゃない?」

「そっか。そうだといいね」

里ちゃんの言葉に大きくうなづいて同意する。

これでしばらく柴村さんから気がそがれるといいんだけど。

あたしは心の中で願わずにはいられなかった。