もう答えは決まっていた。

「――やる。イジメ返し……してみる」

口に出すと急に現実味を帯びてきた。

「そうこなくっちゃ~!カンナがちゃんとフォローするからね~!」

「カンナ、なんか楽しそうだね?」

「そんなの楽しいにきまってるよ~!」

カンナって何を考えているのか分からない。

本当に不思議な子だ。

キャッキャと楽しそうなカンナに思わず苦笑いを浮かべる。

「で、早速だけど、イジメ返しの一人目はどうする~?」

「え……?まだ何も考えてないけど……」

「じゃあ、一人目は若菜先生ね」

「先生もターゲットなの!?」

「当たり前だよ!若菜先生は悪い先生だから、ちゃーんっと懲らしめないと。ねっ?」

にこりと笑ったカンナの目は笑っていなかった。


「そんなことできるのかな……?」

先生に仕返しなんてできるんだろうか?

半信半疑で聞き返す。

「できるよ~!とりあえず、カンナが先生の弱みを調べてみるから少し時間をちょうだい~?。優亜ちゃんはその間誰にどんな仕返ししたいのか考えておいてね~!」

カンナはにこやかにそう話すと、弾かれたように椅子から立ち上がりスキップ交じりに教室を後にした。

その後ろ姿をぼんやりとしながら見送り、心の中でカンナにお礼を言った。

ありがとう、カンナ。

暗い気持ちだったけど、カンナのおかげで少しだけ前を向けた気がする。

イジメ返しができるなんて思っていない。

だけど、カンナとこうやって言葉を交わせただけで少し救われた。

明日からもまた過酷な仕打ちが待っているに違いない。

だけど、あたしはすべてを失ったわけではない。

学校には来ていないけど、大好きな里ちゃんがいる。

そして、柴村さんとカンナ。

数少ないながらもあたしにはまだ友達がいる。

大丈夫。大丈夫だよ。

自分にそう言い聞かせる。

目をつぶると、美亜が『お姉ちゃん、イジメになんて負けないで!頑張れ!』と応援してくれている気がした。