「――優亜、やめな」

「里ちゃん……」

あたしを制止したのは里ちゃんだった。

あたしの前の席に回り込むと、里ちゃんは険しい表情を浮かべた。

「ダメだよ。ここで動いちゃ絶対ダメ」

「だけど……」

「言ったでしょ?あの3人には心がないんだって。今、ここで柴村さんのことを助けようとしたら、あの3人のターゲットが優亜になるかもしれないんだよ?」

「でも、あんなひどいことをされているのに見て見ぬふりなんてできないよ」

「優亜。よく聞いて?優亜が下手な正義感を振りかざしたら、柴村さんだってこれ以上の攻撃を受けるかもしれないんだよ?」

「柴村さんが……?」

「そうだよ。あたしが知る限り、あの3人は一人をずっとイジメるようなことはしない。違うターゲットを見つけたら、その人をイジメるし、イジメ自体に飽きて他のことに興味が移ることもある。だから、今は事を荒立てないほうがいいの。下手に加勢したらイジメがエスカレートするかもしれないよ」

里ちゃんの言葉に言い返すことができない。

里ちゃんの言葉が的を射ていたから。

「でも……このままなんて……そんなの柴村さんが可哀想すぎるよ」

柴村さんは今もなお3人に囲まれて顔をゆがめている。