「――偽善者ぶってばっかじゃないの?」

沢木綾香はあたしの肩を右手で押した。

その目は鋭い光を放っている。

「あたしは偽善者ぶってなんていないよ」

「アンタも懲りないよな。柴村静子のこと放っておけって言ってるだけじゃん?どうしてわかんないかなー」

「柴村さんは関係ないから」

「関係なくないだろ~?そもそもアイツのせいで今、アンタこんなところに呼び出されてるんだし」

小山田マミが呆れたように鼻で笑う。

「あたしは柴村さんがイジメられているのを黙って見ていられないだけだよ。お願いだから柴村さんをイジメるのはやめて!」


何度このお願いをしたかもう数えきれない。


「なんでアンタのいうことを聞かなくちゃいけないわけ?何様のつもり?」


苛立った様子の綾香が細く長い脚であたしのすねを蹴飛ばす。


あたしは両足にぐっと力を込めて耐える。


「この状況で口答えするなんて、どうかしてるわぁ」


みやびはそう言うと、口の端をくいっと楽しそうに持ち上げた。


そして、すぐそばにあった大きなかごの中からバスケットボールを手に取り思いっきり投げつけた。