何が楽しいのかまったく分からない。

3人が柴村さんをイジメているのは明らかなのに、クラスメイトは見て見ぬふりを決め込む。

でも、その様子が気になるのかチラチラ柴村さんたちに視線を送っている。

その視線は同情や哀れみだけではない。

これから先どうなるのかワクワクしているようなそんな好奇の目で見ている気がした。


「この長い前髪何とかしろよ。見てるだけで不愉快だから。それと、ちゃんと髪洗ってくんない?アンタと同じ教室にいるだけで臭いんだよ。それができないならさっさとあたしたちの前から消えろよ」

綾香はそんな言葉を浴びせながら前髪を引っ張る手に力をこめる。

「ぅう……」

柴村さんは首をすくめて必死に痛みをこらえる。

顔がさらに苦痛に歪む。

その姿を見ていることなんてできなかった。

ギュッと手のひらを握り締めて椅子から立ち上がろうとしたとき、後ろから両肩を押された。